1.事業目的および内容
ウクライナ避難民にとっては、どれだけ日本語を習得できるかにより、日本での住みやすさが格段に変わってくる。日常生活の過ごしやすさはもちろんのこと、就業・就学においては必須となる。2022年度の知見をもとに今年度は、定期的な少人数制グループレッスンの開始、能力別レッスンの試み、ウクライナ避難民や在日ウクライナ人・在日ウクライナ人の子どもなどが講師を担当する取り組みを行い、効果を検証する。
2.方法
時期:2023年5月~2024年3月
場所:ウクライナ「心のケア」交流センター(東京・渋谷)、オンライン
対象:ウクライナ避難民
枠組み:1回あたり60分~90分。基本週1回、対面およびオンライン実施。
3.実施状況
9月までは個別レッスンのみの実施であったが、10月からは能力別(初心者クラス・初中級クラス)×少人数制のグループレッスンを導入した。期間中、個別レッスン198回、グループレッスン91回を実施し、うち日本財団の助成を受けたのは個別レッスン186回、グループレッスン4回であった。
担当講師として、母親が在日ウクライナ人である日本人講師を新たに迎え、ウクライナ避難民への対応強化をはかる取り組みを行った。また、日本財団の助成外ではあるが、日本語教育の経験のあるウクライナ避難民が主にグループレッスンを担当する取り組みを新たに開始した。
(1)個別レッスン
日本財団助成分としては期間中、合計9名のウクライナ避難民に対し、対面およびオンラインで実施した。特に昨年度から継続して来られているウクライナ避難民は、レッスンの中で英語やポケトークを使ってウクライナ語で補足する機会が減り、日本語だけでの会話をする機会が増えた。
(2)グループレッスン
毎回平均4.5人のウクライナ避難民がレッスンを受け、合計のべ414人のウクライナ避難民がグループレッスンを受けた。日本財団助成分のグループレッスンとしては、お茶会や、おでんなどをしながら、楽しみながら日本語だけで会話をする取り組みを行った。
4.効果など
小人数制のグループレッスンは、ウクライナ避難民の方々同士のつながりをつくることにもなり、レッスンへの継続率が9割以上と高い数字となった。ウクライナ避難民が講師を担当することが多いせいか、お互いに支えあい、励ましあう空気感が生まれており、自助コミュニティとして心のケアの一端を担う形にもなっている。なお、個別レッスンで長く通っていたウクライナ避難民が、日本語もかなり上達したことで、仕事が決まって忙しくなり通えなくなったケースも増えてきた。仕事が決まった後も、担当日本語講師経由で相談が寄せられることもあり、セーフティーネットの一端にもなっている。ウクライナから避難されてきた方々が、ウクライナの方々とのつながり、そして日本人とのつながりを多く持っておくことで、心のケアが必要になった時のヘルプサインを出しやすくなる環境をつくることができる。
引き続き、より実践的な日本語教育を行っていくことで、日本での精神的安定感や、就業・就学支援につながるような取り組みを実施する。