一般社団法人 全国心理業連合会(全心連)

Japanese Organization of Mental Health and Educational Agencies

私たち心理カウンセラーの役割を解説します。

企業・産業分野における役割

企業・産業分野において、
心理カウンセラーは重要な役割を担っています。

企業活動において、従業員のストレスマネジメントやメンタルサポートは重要な経営課題であり、企業では福利厚生施策の一環として産業医、保健師、臨床心理士、心理カウンセラーを使い分けて従業員のメンタルサポート対策を行っています。
そういった体制の中で心理カウンセラーは、職場や仕事の悩みを抱えた従業員や軽度の鬱状態の従業員に対して、電話相談や社内相談室などの相談員として、症状を初期段階で食い止め改善する役割を担っています。また、健康な状態の従業員がストレスを上手くマネジメントしていくための教育研修も幅広く行っており、予防という面でも重要な役割を果たしています。

メンタルサポートは、企業にとって重要な経営課題

企業活動において従業員のメンタルサポートは重要な経営課題になっています。実際に企業従業員の半数以上が強いストレスや不安を感じており、約6%がメンタルな課題のサポートを必要としています。
昨今のデフレ時代において従業員のストレスマネジメント、メンタルサポートが職場に占める重要性はますます増しています。

企業従業員のメンタルヘルス

企業におけるメンタルサポートの4ステップ

企業従業員のメンタルサポートは、

  1. 教育研修による予防
  2. 悩みや経度の鬱症状を改善するためのカウンセリング
  3. 症状が悪化した従業員のケアの為の治療や指導
  4. 回復してからの復職支援

という4つのステップがあります。
この4つのステップの中で、症状が悪化した従業員は産業医や保健師が担当し、経度の鬱状態の従業員の相談業務は心理カウンセラー(特に産業カウンセラー)や臨床心理士が担当するという役割分担がされています。また、健康な従業員の教育研修は、そのほとんどを心理カウンセラーが行っています。

企業におけるメンタルヘルスマネジメント
企業のメンタルヘルスケアの取り組み

心理カウンセラーの活動が制限された場合のリスク

今回の心理師国家資格法案によって、万が一心理カウンセラーと臨床心理士が国家資格によって区別され、心理カウンセラーの活動が法的に制限されるような事態になると、企業従業員のメンタルサポートの現場では混乱と問題が生じることが予想されます。
現在心理カウンセラーが担っている相談業務や教育研修業務などが円滑に行われにくくなり、その結果、ストレスマネジメントのレベルアップが図れず職場で悩みを持つ従業員のメンタルな健全性を取り戻す確率が減少したり、重度の鬱状態で休職をやむなくされるケースが増加したりするリスクがあるのです。
また、企業では、第一線を退いた年長社員が心理カウンセリングの知識を研修して、心理カウンセラーとして相談員やアドバイザーなどを担うことも多くあります。こうしたこまやかなメンタルサポートが制限されると、企業にとってはさまざまな面でディメリットが生じることになります。

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企業担当者の声

1.国内大手IT企業 産業医

杉村労働衛生コンサルタントオフィス
産業医科大学産業生態科学研究所人間工学研究室
杉村 久理

「社内カウンセラーに求められるもの ~当社の場合~」

近年、増大する労働現場のストレスに対し、企業は様々な取り組みを行っています。その一つとして、社内にカウンセラーを置く企業も増えてきています。私が産業医をしているあるIT企業でも2006年より、社内カウンセラーを置くようになりました。

「社内カウンセラーに何を求めるか?」その企業のメンタルヘルス体制を構築する際に、この点のディスカッションが行われました。多くのディスカッションの末に出したキーワードが「共感」でした。社員のメンタルステイタスを維持・向上するために、カウンセリングでできるだけ多くの心の中にあるモヤモヤを出してもらいたい。そのために必要なのがカウンセラーとクライアントの間のラポール(信頼感)であり、このラポールを形成するのに有効なのがクライアントへの共感だと考えました。
社員がクライアントである場合、カウンセリングのテーマは社員の置かれている立場や環境、人間関係、業務の量や質などの負荷的(つまり外的)な問題や、心の痛みや苦しみ、うつ的な症状などの負担的(つまり内的)な問題であることが多く、社内カウンセラーはこの両方の問題への共感ができることがポイントとなります。
そしてこの負荷的な問題への共感はクライアントと同じ立場である社員が一番良くできます。同社にはSE(システムエンジニア)が多くいるのですが、彼らの業務の量や質の負荷などは一般的に理解されにくいことが多くあります。しかし、同じ仕事をしている社員であればその状況はよく解り、同じ視線で問題を共有することができます。また負担的な問題については、メンタル的なものであれ、フィジカル的なものであれ、その本当の痛みや苦しみは実際に体験した者にしか解りません。逆に言えばこの体験者が最もよく理解しており、彼ら体験者の共感がクライアントの心に最も響くのです。

そこでその企業では、健康障害を体験したことのある社員にカウンセラーの資格取得を勧め、社内カウンセラーとなることを依頼しました。社内カウンセラーというと大学で心理学を学んできた臨床心理士がなるケースが多いですが、このように同社のカウンセラーは元々心理学とは関係のない分野出身の社員たちです。彼らは、引き続き本業であるSEや営業、スタッフとしての業務を行いながら、カウンセリングはあくまで副業的な形で活動をしています。

彼らには、普段我々産業医や産業看護職のメンタルヘルス活動のサポートとして、社員のカウンセリングの依頼をしていますが、それ以上に社員から彼らに直接カウンセリングを申し込まれるケースも多くあります。またそれだけでなく、社内のトイレや休憩コーナー等の何気ない場所で社員から自身や友人について相談をされることや、管理職から部下に関する相談されることもあるようです。
彼らカウンセラーは社内の事情や業務内容に精通している分、社員や管理職にとって恐らく我々医療職よりも身近で共感を得やすい存在なのだと思います。

これからも多くの企業の中でカウンセラーの必要性は高まるでしょう。現場ごとにカウンセラーへのニーズは変わるでしょうが、どのカウンセラーにも共通して必要なのはクライアントへの「共感」です。今後クライアントに共感できる社内カウンセラーが企業で増え、活躍されることを期待しています。

2.某大手製薬企業 人事部教育研修担当 30代女性

「企業内でも、心理カウンセラーが活躍しています」

私の勤める会社では、外部の民間カウンセリング会社と契約して、相談業務などを委託しております。
社員が誰でも気軽に利用できる電話カウンセリングの利用と併せて、弊社専属という形で担当していただいているカウンセラーがおられます。専属カウンセラーは、マネージャー職へのメンタルヘルス研修をはじめとする発症予防プログラム、メンタル不調を訴える者への出張面談、メンタル不全による休職者へのかかわり~復職支援まで、一貫してご担当いただいています。数千人の社員が全国の事業所に点在しておりますので、常に飛び回って対応していただいており、大変お世話になっております。

私も仕事柄、カウンセラーの方とコンタクトを取らせていただくことがあります。
業界の特徴で、新入社員は数カ月に及ぶ長期間の研修を経て現場に配属となります。その数カ月の研修を担当しているのですが、社会に出て間もない新入社員の中には、慣れない環境へのストレスや人間関係のトラブル、莫大な学習量についていけない等で毎年何人かメンタルに不調を訴える者が出てまいります。1人そうした人がいると、周囲にも影響し、連鎖的に数人が不安定な状態になることもあります。
私の場合教育研修担当者という立場上、傾聴だけに徹するわけにもいかず、全ての新入社員に平等に接しなくてはなりませんし、時には目標に達しない者を鼓舞したり、厳しく叱ることも求められます。そうした中でメンタル不全の兆候が現われ始めた時には、カウンセラーの方に研修所へお越しいただいて対応していただけるのは本当に助かっています。

契約しているカウンセラーは、臨床心理士ではありませんが、きちんと勉強されてカウンセリングの資格を持っておられます。何よりも、同業界の営業職・マネージャー職としての長い現場経験のある方なので、社員の気持ちを誰よりも理解して親身に対応していただいています。しっかりとした社会経験と豊富なカウンセリングの実務経験をきちんとベースに持っておられることが何より大切なことと、この方が本当に社員の心に寄り添った対応をしていただいているのを知るにつけ感じております。

3.アパレル企業 自らがカウンセリングを学んだ経営者

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