Japanese Organization of Mental Health and Educational Agencies
若者のコミュニケーション手段に、変化が起こっています。総務省「平成30年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、10代の平日1日でのコミュニケーション系メディアの平均利用時間は、通話を伴う方法としては、携帯電話が3.1分、固定電話が0.0分、ネット通話が5.1分となっています。一方、主に文字を利用する方法としては、メール利用が13.5分、ソーシャルメディア利用が71.6分となっています。コミュニケーション手段として、通話を伴う方法よりも主に文字を利用した方法が多く利用されている傾向は全年代においてみられますが、特に10代の若者にとっては、ソーシャルメディアの利用時間が突出していることがわかります。
公的機関をはじめとした従来の相談窓口は、対面、電話、メール等の方法により相談対応を行ってきました。これらに加えて、若者が日常的に使用しているコミュニケーションツールを通して相談ができる体制を整えることで、相談に対するハードルを下げ、一人で悩みを抱え込むことを防ぐことにつながります。そこで、国や自治体においてSNSを活用した相談体制の構築・整備が広がりを見せており、企業・団体等においてもSNS相談窓口の開設が増えています。
SNSカウンセラーは、LINE等のSNSを用いてカウンセリングを行うための知識やスキルを持ち、SNS相談において安心・安全なSNSカウンセリングを提供できる人材です。SNS関連事業者、電話相談事業者、カウンセラー、研究者らが幅広く連携して活動を行っている「一般財団法人全国SNSカウンセリング協議会」では、これらの人材を保証するための認定登録制度を開始し、SNSカウンセラーの能力の担保、禁止事項の明確化を行っています。
全心連は、全国SNSカウンセリング協議会から、SNSカウンセラー養成講座実施団体として認定を受けています。
一般財団法人全国SNSカウンセリング協議会 SNSカウンセラー認定登録制度とは
https://smca.or.jp/sns-counselor/certification/
全心連は、必要な方が、必要な時に、安心して心のケアサービスを受けることができる文化の創造をめざして、心理カウンセラーの業界団体として活動してきました。その中で、SNS相談はたとえば隣に加害者がいたとしても、手のひらにあるスマートフォンからSNSを通して助けを求めることができる相談体制であり、日本の社会において必要、かつ有効であると言えます。心理カウンセラーがやりやすいスタイルで相談を受けるのではなく、クライアントが相談しやすいスタイルに心理カウンセラーがあわせていくことはとても大切なことだと考えています。
そこで、2019年度の全心連公認プロフェッショナル心理カウンセラー認定試験より、全国SNSカウンセリング協議会が認定するSNSカウンセラー養成講座10時間を、受験資格として必須としています。社会のニーズにあわせた心理カウンセリングを提供できる資格として、プロフェッショナル心理カウンセラーはSNSカウンセラー認定を標準とした心理カウンセラー資格となっています。
1.対面、電話、メールとは違った独自のスキルである、SNSカウンセリングスキルの習得
2.SNSカウンセリングの業界団体である、一般財団法人全国SNSカウンセリング協議会認定
3.SNSカウンセラーとして多くの現場を担当可能
4.在宅でのカウンセリング業務可能
5.スーパーバイザーとして活躍する道も
全心連公認プロフェッショナル心理カウンセラーをはじめ、全国SNSカウンセリング協議会が指定する心理カウンセラー資格を所持している場合は、協議会指定のSNSカウンセラー養成講座(10時間)を受講し、協議会への登録手続きを行うことで取得できます。
SNSカウンセラー養成講座「SNSカウンセリング研修」10時間カリキュラム
・若者のコミュニケーション形態の変化と相談窓口のミスマッチ
・SNS相談とは?-意義、特徴、メリット・デメリットなど
・SNSカウンセラーの役割や倫理
・SNSカウンセリングスキル
・SNSカウンセリングの流れ、ロールプレイ など
費用:50,000円(教材費、税別)
全国にある全心連の指定団体で受講いただけます。
※指定団体・講習日程はこちら
隣接国家資格を所持している場合は、協議会指定のカウンセリング50時間講座と、SNSカウンセラー養成講座を受講し、協議会への登録手続きを行うことで取得できます。詳しくは下記をご確認ください
※SNSカウンセラー認定登録要件はこちら
SNS相談は、2017年に長野県で実証事業が行われたことから始まりました。その後、加害者がSNSを利用し、自殺願望を投稿するなどした被害者の心の叫びにつけこみ、言葉巧みに誘い出し、殺害するという、座間市で起こった凶悪事件が起こりました。この事件の再発防止について検討される中で、SNSを通して自殺願望を発信する若者の心のケアに対する対策として、SNSを活用した相談体制の構築が進むことになりました。全心連では、2018年3月の自殺対策強化月間にて、厚生労働省のSNS相談事業を受託したことから、SNSカウンセリングに携わることになりました。
SNSカウンセリングは、カウンセリングの手法としては新しい分野であり、様々なSNS相談事業において知見やノウハウを積み重ね続けている段階と言えます。全心連では特に、自殺対策、いじめ相談などはもちろんのこと、災害、ひきこもり、事件、インターネット上の悪質な書き込みなど、新しい分野における心のケアとして、SNSカウンセリングを導入することにより、知見を得る活動を続けています。